「ふつうの相談」を家庭医療的に読む

ふつうの相談0とは、不調を「個人症候群」(中井久夫)として扱っているときに生じるものであり、疾患として診断、ラベリング、抽象化される前の原初の状態のものを言う。ふつうの相談0を持ちかける相手は、中井の言う熟知性の間柄にある人たち、つまり主…

パワー・オブ・ザ・ドッグ

ホモソーシャルな世界で精神的な絆だけでなく,肉体的な絆も求めてしまう自分に,フィルは嫌悪感を抱いていただろう.イエール大学で古典を専攻し,主席で卒業したほど教養があったにも関わらず,アカデミックな世界ではなく,カウボーイとなり世間の期待す…

「たべきる」と「使い切る」

三浦哲也の『食べたくなる本』の,「おいしいものは身体にいいか」という表題の文章では,料理家の有元葉子の「暮らし」について語られている.本によると,有元は食を含めた生活全般を,「循環」の相から見つめ直そうとしている.土着のものを無駄なく使い…

運命と偶然性

病気になった人は,必ず自問するだろう.医療者なら一度は患者から訴えられたことがあるだろう.「どうして自分がこの病気になったのか?どうして自分だけ?」 こうした患者からの訴えに,わたしたちはどう答えたらいいのだろう? 九鬼周造を研究する哲学者…

「風の谷」と対称性

安宅和人氏の「風の谷」の試み、またコロナ以降の世界の展望、「開疎化」という概念を知り、だいぶ昔にひっそりと書いた文章を思い出した。今回のコロナで、人間(と家畜)ばかりが繁栄し、ひたすら増殖して他の生物や自然環境を圧迫していく未来に希望はな…